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色相環がつながるのはなぜ?  

雑記です。

色相環↓ってニュートンのころから提唱されてるんですけど、
本読んでて紫(380nm~)と赤(~780nm)って波長に隔たりがあるのに、
何でここだけつながるの?っていう疑問がわいたものの、
明確な回答が見つけられておらず、モヤッとしているという話。
sikisoukanb.png

これについてもうちょい具体的に何が違和感があるかを書く前に
前提となる話を少し説明します。



■そもそも色覚はどこで始まるか

物体に光が当たり、その物体の素材に応じて一部の光は物体に吸収され熱などに変わります。
で、残りが反射して網膜に入ってきます。
あるいは、光が物体に反射することなく直接網膜に入ります。

↓ヒト網膜の断面のイメージ。上が瞳孔で下が眼底。
momaku2.png

生物種によってかなり構成が変わりますが、人の場合は大体こんなかんじで、
上から光が入ってきて、ごちゃごちゃある細胞群を光が抜けて、
黄色い色素上皮層の上にある「視細胞」で光が検出されます。

「視細胞」は明暗検出に優れる桿体細胞と、色検出に優れる錐体細胞の
2種類があります。絵だと赤青緑で描いているのが錐体細胞。

これらは明確に「赤」とか「青」とかを検出するわけではなく、
これらの細胞に含まれるロドプシンというたんぱく質が吸収する色を検出します。
このロドプシンはオプシンというたんぱく質と、レチナールという色素で構成されていますが、
光の波長によって反応が変わるのはオプシンのほうです。
で、この吸収する色の波長は結構幅があります。

下グラフは霊長類の3種のオプシンの反応について、最大量を100として縦軸を取り
横軸に光の波長を置いたものです(クリックで引用元へ)。

g2.jpg

Sが青に近い色に反応する錐体細胞のオプシン
Mが緑に近い色に反応する錐体細胞のオプシン
Lが赤に近い色に反応する錐体細胞のオプシンです。
結構波長の幅が広いんですよね。

緑と赤がすごく近いですが、
進化の過程では紫外型・青型・緑型・赤型 → 青型・赤型 → 青型・緑型・赤型に変化したと
考えられていて、いったん青赤型になったところから赤が分化して緑ができたので
距離が近いといわれています。
理由は陸上の緑や果物の赤を見分ける必要が生じたとかそういう想定。



■錐体細胞で検出されたRGBをダイレクトに脳で認知するの?

これは色覚の初期部分のイメージですが、網膜錐体細胞で検出された
だいたい「赤」「青」「緑」に分けられた信号は、網膜のもうちょい瞳孔側にある
細胞群において加算・減算されて、「輝度」「赤-緑の差」「青-黄の差」に反応する細胞に変わります。

hantai.png

ここの加算減算が行われることで、色に関する信号的には
「赤緑細胞のうち赤の反応が緑より多いと反応する細胞」→赤
「赤緑細胞のうち緑の反応が赤より多いと反応する細胞」→緑
「青黄細胞のうち青の反応が黄(赤+緑)より多いと反応する細胞」→青
「青黄細胞のうち黄(赤+緑)の反応が青より多いと反応する細胞」→黄
の4つの信号に変わり、この後の大脳側で処理に繋がっていきます。

ポイントはあくまで「赤と緑の差」「青と黄の差」に反応し
「赤」「緑」「青」「黄」それぞれに反応するわけではないという点です。
赤と緑、あるいは青と黄が同時に知覚されず、
「赤っぽい緑」や「青っぽい黄」といった補色を組み合わせた感覚がない、
いわゆる「反対色」という感覚が細胞の回路構成でできているという話です。

Thomas YoungやHermann von Helmholtzは赤緑青の3原色で色が作られるという説だったのに対し、
Ewald Heringは赤緑青黄の4原色じゃね、という説を唱えたんですが
解剖学的にはどっちも正しいことになります。



■色相環の話は?

で、ようやく戻ってくるんですが、
この補色関係にある4つの色同士を足し合わせることで
橙、黄緑、青緑、紫などの感覚が得られるわけで
「赤緑細胞のうち赤の反応が緑より多いと反応する細胞」→赤
「青黄細胞のうち青の反応が黄(赤+緑)より多いと反応する細胞」→青
が同時に反応する状態、が紫を認識する状態で、
錐体細胞で言うと赤と青を検出するやつが同時に反応する状態が紫ということです。

hantaisyoku.png

でもこれ
「紫(400nm)が網膜に入った状態」と
「青(480nm)と赤(700nm)が同時に網膜に入った状態」
の感覚が同じっていうことですよね、
平均ですらないんですよね。よりエネルギー的に高いものと誤認するっていう。
当初の私の疑問である色相環がつながるのはなぜ?っていうのは
この紫の感覚が同じになるのはなぜ?という疑問です。


■個人的な解釈

上でオプシンのグラフをのせましたが、
短波長の領域においては青だけでなく赤や緑にも
若干反応するんですよ。

紫を認識する時って400nmあたりなので
・S(青)が最も反応する
・L(赤)が反応する
・M(緑)が最も反応しない
状態ですから、
「青黄細胞が青を返す」
「赤緑細胞が赤を返す」
状態ですよね。

一方で赤の光と青の光を同時に網膜に入れると
これと同じ状態になるので、感覚的に同じであると誤認するのではないかと。
なので色相環がつながる理由はLのオプシンが赤領域だけでなく、
短波長の紫に近い領域でも光に反応するからでは??と
想定しているんですが、どうなんでしょうね。

ネズミならともかく網膜錐体細胞の反応を細胞が生きたままパッチクランプなどで計測するのって
その網膜提供するヒトどっから連れてくるの??っていう理由で
かなり難易度が高いはずで、ざっと調べた時に死んだ人の網膜から取り出した
オプシンの光への反応は論文が出ても
網膜視細胞の霊長類のスパイク数とかが見つけられなかったのは、手法の難易度のせいかと思うのですが、
もしかしたら細胞から計測しているデータもあるかもしれないです。
そっちのほうが確実なことが言えるとは思うのですが・・教えて詳しい人・・。

ちなみに色相環の同じ疑問を持った人は国内外で結構見かけて、
私と同じ解釈の人はいたんですが視覚の研究者ではありませんでした。
一番多いのは「色相環がつながるのは色相環をそう設計したから」
「赤と青の波長に差があろうが人が設計した仮想区間のような話なので関係ない」といった
議論そのものをしない回答でした。




■補足

今回は網膜の話か書いてませんが、
色の情報は網膜→視床下部→大脳皮質一次視覚野に流れます。
左の視野の情報が右脳、右の視野の情報が左脳で処理されます。
nou.png

そのあとは二次視覚野→四次視覚野→下頭側皮質に流れる腹側視覚経路を通り、
最終的に色が見えてるわーという感覚を得ることになります。

色なんて網膜視細胞で検出できてるのになんでそんな経路へるの???っていう話なのですが、
水彩錯視だと輪郭部分にだけ色が塗られていると中まで塗ってあるように錯覚する
色の同化だと同じ色でも隣り合う色の情報によって異なる色に見える
わけで、こうした錯覚から推察すると、純粋な絶対値で色を感じているのではなく、
隣り合う色同士を比較して色を感じているとか、
見えた図像を地と分離して輪郭線の情報から図像全体の色を推察するとか、
結構いろんな処理をしないと我々の視覚って構成できないみたいです。

このあたりは
バッハ先生の趣味サイトで錯視をやってみたり、北岡先生の吐きそうな錯視を見たり、
視覚科学を読んだりすると、さわりはわかるかと。

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Posted on 20:19 [edit]

category: 雑記

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